解剖学を医学部以外で学ぶ方法とは?人体解剖の種類や実施条件を解説!

少し学習難位度が高く、とっつきにくいイメージのある人体解剖学。医師や研究者のみが勉強する学問だと思っている人も多いかもしれません。

しかし人体解剖学の知識は、パーソナルトレーナーやインストラクターなど運動指導をする人にとっても役立つ学問です。

この記事では、人体解剖学の概要や種類、医学部以外で人体解剖学が学べる場所などについて解説します。人体解剖学がどのような学問なのか知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

人体解剖学とは?

まずは人体解剖学の概要や歴史を押さえておきましょう。
本項では、

・人体解剖とはどのような学問なのか?
・人体解剖の歴史

の2点について詳しく見ていきます。

人体解剖学とはどのような学問なのか?

人体解剖学とは、解剖学のなかで組織学や細胞学を除いた、人体の器官や組織に関して研究する学問の事をいいます。単に解剖学と呼ばれる事も多いですが、解剖学には動物解剖学と植物解剖学とがあり、このうち動物解剖学の一部としてあるのが人体解剖学になります。

人体解剖学の歴史

人体解剖学の歴史は紀元前3世紀まで遡り、エジプトの都市アレクサンドリアでの発生が、最初だったといわれています。その後、時を経て1304年、ボローニャにて初の公開解剖がおこなわれました。これにより、医学における人体解剖の重要性が認められる事となります。

1722年には、ドイツのヨハン・アダム・クルムスが『解剖学表』を刊行しました。のちに『解剖学表』のオランダ語版『ターヘル・アナトミア』を杉田玄白・前野良沢が翻訳し、1774年にはかの有名な『解体新書』が刊行されました。

以上のとおり、エジプトで生まれた人体解剖学は書物を通じて世界に広まることとなります。

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日本における人体解剖の種類とは?

日本国内の人体解剖には、病理解剖・法医解剖・正常解剖の3つの種類があり、これらの研究成果が医学の向上などに役立っています。それぞれの特徴を見ていきましょう。

日本国内の人体解剖には、

・病理解剖
・法医解剖
・正常解剖

の3つの種類があり、これらの研究成果が医学の向上などに役立っています。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

病理解剖

病理解剖とは、おもに病気で亡くなった人の、生前の状態や死亡原因を調べるためにおこなわれる人体解剖です。基本的には大きな総合病院などで亡くなった人が対象で、遺族に許可を得たうえで解剖をおこないます。病理研究のために必要な標本が採取できたら、遺族に遺体を返します。

法医解剖

法医解剖は、ドラマなどでもテーマ化されているので、耳にした事がある人も多いでしょう。法医解剖は、事件性のある死亡要因が考えられる際におこなわれる解剖です。病理解剖とは違い遺族の許可は必要なく、警察が遺体を持ち帰り、解剖するかどうかの判断を下します。

正常解剖

正常解剖は、生前にボランティアとして承諾していた人の遺体を解剖する事をいいます。本人の意志に基づいておこなわれる解剖ですが、死後遺族の許可は必要になります。病理解剖や法医解剖と比較すると緊急性が低く、数か月かけてじっくりと解剖していきます。

おもに、医学部や歯学部の学生教育のためにおこなわれます。

人体解剖を学べる場所とは?

人体解剖を学ぶ場所には、どのようなところが挙げられるでしょうか。

具体的には、以下4つの方法で人体解剖学を学ぶことができます。、

・大学の医学部・歯学部
・専門学校
・専門書
・トレーナースクール

以下にて、4つを詳しく説明していきます。

大学の医学部・歯学部

長い目で見て人体解剖学を専門的に学ぶなら、大学の医学部または歯学部へ入学しましょう。
先述のとおり、本来は死体にメスを入れる行為は法律で禁止されていますが、医学などの研究に必要な場合のみ人体解剖が許されます。

そのため、医学部・歯学部以外の学生が人体解剖の実習を受ける事はできません。学生が人体にメスを入れる行為が法律で許可されているのは、医学部と歯学部の2学部のみとなっています。

医学部と連携している大学の学部や専門学校

医学部と連携している大学の学部、たとえば理学療法や作業療法、看護学部などや、リハビリ関係の専門学校でも人体解剖学を学ぶことができます。

医学部や歯学部の人体解剖実習の見学をすることで、実際の人体を見て学んだり、模型を用いた実習や人体解剖の講義、教科書を用い人体の構造を理解する授業などを行なうことで実践的な知識・技術が取得できます。

専門書

実際に人体解剖をおこなう資格を得るためには、大学の医学部・歯学部への在籍が必要です。

ですが、実習ではなく知識を得るだけであれば、専門書の活用がオススメです。

実際に解剖するわけではないものの、人体解剖学の学習を経て得た知見は、パーソナルトレーナーやインストラクターなどさまざまな職業に活かす事ができます。

トレーナースクール

トレーナースクールは、ジムやスポーツクラブなどで活躍するトレーナーを養成するスクールです。

トレーナーの仕事は人間の身体を扱う仕事であるため、人体の筋肉や骨などの構造や機能を知るための解剖学は、トレーナーにとって重要な学問といえます。

実際にトレーナー認定資格であるNSCAなどでは資格取得に解剖学の知識が求められます。トレーナーやインストラクターとしての知識レベルであれば解剖学をトレーナースクールで学ぶことができるので、解剖学を学ぶ一つの方法として覚えておいてください。

人体解剖学を学べる専門書6選

人体解剖学を学べる6つの専門書

・解剖生理をおもしろく学ぶ
・イメージできる解剖生理学(ナーシング・サプリ)
・解剖生理学ノート 人体の構造と機能 第3版
・のほほん解剖生理学
・入門運動生理学第4版
・身体運動の機能解剖

を簡単にご紹介していきます。

人体解剖を学ぶときにぜひ役立ててください。

解剖生理をおもしろく学ぶ

「解剖生理をおもしろく学ぶ」は、解剖生理学をできるだけわかりやすく伝えるように工夫された本です。

解剖生理学の本や教科書は、看護学生を対象としたものが多い中、柔道整復師やスポーツトレーナーを目指す人も理解しやすいように、イラストを豊富に用いるなどの工夫がされている点が特徴です。

イメージできる解剖生理学(ナーシング・サプリ)

「イメージできる解剖生理学」は、看護学校などでも副教材として用いられています。

問題集の体裁をとっていて書き込む事ができるなど、使い勝手の良さが高く評価されています。「イメージできる」とのタイトルどおり、イラストが多く使用されているのも特徴の1つです。

基礎を固めたいときにオススメの1冊です。

解剖生理学ノート 人体の構造と機能 第3版

「解剖生理学ノート 人体の構造と機能」は、解剖生理学の暗記事項を直接書き込める本です。

管理栄養士の試験対策として作られているため、要点もまとまっており、知識を学ぶのと同時にアウトプットをしながら学習する事ができます。

のほほん解剖生理学

のほほん解剖生理学は、分かりやすい表現やイラストが多いため、初心者におすすめの書籍です。解剖学の知識がまったくない人でも読みやすく書かれています。

解剖生理学を勉強し始めたいけれど、どの本を買えば良いか迷っているという方は、のほほん解剖生理学から読んでみてはいかがでしょうか。

入門運動生理学第4版

入門運動生理学は、基本的な生理学の内容が網羅されています。生理学の勉強はこの1冊があれば大丈夫といえるほど生理学の勉強に適した書籍です。

入門運動生理学の表現は、先ほど紹介したのほほん解剖生理学と比べて難しいと感じるかもしれません。そのため、初心者ではなく生理学の知識がある程度ある方のほうが理解しやすい本といえます。

身体運動の機能解剖

身体運動の機能解剖は、効果的なトレーニングフォームや応用のしかたを学ぶことができる書籍で、トレーニング指導をしている方には特におすすめです。

各筋肉ごとにイラストつきで筋肉の働きが解説されているので、分かりやすく飽きずに勉強できるでしょう。

人体解剖をおこなうための条件とは?

人体解剖をおこなうためには、死体解剖保存法により下記5つの条件が定められています。

そこで本項では5つの条件である、

・目的:医学の教育・研究に資すること
・資格:医学科解剖学教員・厚生労働大臣の認定した者
・遺体:故人の意志の尊重、遺族の承諾を得ていること
・場所:医学に関わる大学の解剖室
・礼意:特に礼意を失わないこと

に関して詳しく説明していきます。

目的:医学の教育・研究に資すること

本来、死体にメスを入れる事は刑法第190条により禁止されており、法を破れば死体損壊罪となり罰せられます。法医解剖のような医学の教育・研究のために必要だと判断された場合のみ、人体解剖が許可されます。それ以外の目的で解剖する事は許されません。

資格:医学科解剖学教員・厚生労働大臣の認定した者

人体解剖は、当然ながら誰でもおこなえるわけではありません。人体解剖をおこなう事のできる有資格者のみ、その権利を有しています。

具体的には、解剖学の大学教授・助教授、死体解剖に関して十分な学識技能がある医師、そして厚生労働大臣が認可した者が人体解剖をおこなう事ができます。

遺体:故人の意志の尊重、遺族の承諾を得ていること

死体解剖には、対象者の生前の意志が尊重され、遺族の承諾も必要になります。特に故人の意志は、遺族の承諾よりも重視されます。ただし、死因に事件性が疑われる場合や、身元不明者の場合など、故人や遺族の承諾の必要がないケースもあります。

場所:医学に関わる大学の解剖室

人体解剖は、医学に関わる大学の、特に設けた解剖室でおこなう事とされています。ただし大学の医学部であっても、医学科以外の学科である看護学科や保健学科などは、人体解剖をおこなえる場所に該当しません。

礼意:特に礼意を失わないこと

人体解剖では、遺体の尊厳を特に重視します。解剖をおこなう有資格者は、遺体に対する礼を失わないという前提のもとで解剖をおこないます。人体解剖の実習や見学をおこなう場合、遺体への礼意を失わないよう、実習指導者には学生などに指導をして理解させる義務があります。

人体解剖学を活かせる職業とは?

人体解剖学を学ぶ場所や選択肢、人体解剖学の知識を活かせる職業にはどのような職業があるのでしょうか。

本項では人体解剖学を活かせる職業として、

・医師・技術者
・フィットネスクラブのインストラクター
・パーソナルトレーナー

の3つをご紹介します。

医師・技術者

人体解剖学を活かせる代表的な職業として、医師や生物系の技術者などがあります。医学科の学生にとって解剖学が必須科目であるように、医学の道に人体解剖学は必要不可欠な知識です。

医師のなかでも法医解剖に特化した、法医学者という職業もあります。法医学者になる場合も通常の医師と同様に、医学部で6年間しっかりと学びます。法医学者は医師と比べてまだまだ人気の劣る職業ですが、近年テレビ番組などで取り上げられる機会が増加し、関心が高まっています。

フィットネスクラブのインストラクター

解剖学の研究などに用いられる、遺体の処理や肉体標本の作製に従事する、解剖技術者という職業もあります。解剖学の知識はもちろん、必要な生理学や病理学などの知識、利用する器具などを扱う技術などが必要です。

パーソナルトレーナー

人体解剖学は、手術や解剖をおこなう人のみに必要な学問だと思われがちですが、実はトレーナーなどの運動指導者にとっても、学んでおいて損はない学問です。

トレーナーは運動の方法や栄養に関する知識以外にも、人体の構造をある程度知っておく必要があります。人体の構造に関する知識があれば、適切な運動指導をおこないやすいからです。実際に人体解剖学を詳しく学んでいるトレーナーは多くないため、知識がある事をアピールできれば強いアドバンテージとなるでしょう。

トレーナーエージェンシーでは、

トレーナーとして必要な素養
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まとめ

人体解剖学の概要や歴史、解剖をおこなう条件や学べる場所、活かせる職業などを解説しました。人体解剖学は多くの人のイメージどおり、難しく専門性の高い学問です。

しかし、知識を身につける事ができれば、医師以外のトレーナーなどの職業にも役立てる事ができます。

大学で専門的に学ぶのは少々ハードルが高いですが、専門書を読めば基礎知識を得る事は可能です。人体解剖学を学んで、他人と異なるアドバンテージを持ったトレーナーを目指してみてはいかがでしょうか。

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