理学療法士と作業療法士の違いを説明できますか?
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理学療法士と作業療法士の違いをご存知ですか?
高齢化が進行している現在の社会において、医療・介護・リハビリテーション分野に対する関心は日々高まってきています。
特にリハビリテーション分野で活躍を期待されているのが、理学療法士と作業療法士の2つの国家資格です。
名前が非常によく似ていますが、どのような違いがあるのでしょうか?その違いを説明していきます。
理学療法士と作業療法士の仕事内容
理学療法士と作業療法士はどちらも医療・介護・リハビリテーション分野で活躍する国家資格ですが、「理学療法士及び作業療法士法」で定められている部分で違いがあります。
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、理学療法士及び作業療法士の資格を定めるとともに、その業務が、適正に運用されるように規律し、もつて医療の普及及び向上に寄与することを目的とする。(定義)
第二条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
2 この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。
3 この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。
4 この法律で「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。
この法律で定めた部分を大まかに要約すると、下記のようです。
■理学療法士とは、「身体の障がいに対して、運動や刺激などで、立ったり歩いたりなどの基本動作の回復をサポートする人」
■作業療法士とは、「身体と精神の障がいに対して、手の動作や細かい作業などで、家事や就労などの人らしい生活の回復をサポートする人」
理学療法
- 目的:基本動作の回復・維持・悪化防止
- 内容:基本動作である起き上がり・筋力強化・座位保持・車いす移乗・歩行などを自力で行えるようにサポート
- 活躍の場所:一般あるいは総合病院・リハビリテーション病院・老人保健施設・スポーツ関連施設など
作業療法
- 目的:応用動作と社会適応のための能力回復
- 内容:応用動作である料理・遊び・スポーツなどを通して、精神と身体の両面からの回復サポート
- 活躍の場所:一般あるいは総合病院・リハビリテーション病院・精神科病院・老人保健施設・障がい者福祉施設・児童養護施設など
つまり理学療法士と作業療法士は名前は非常に似ていますが、リハビリで扱う分野が違うということです。
とくに作業療法士は精神面にアプローチ出来ると言う部分が、差異として一番大きい要素です。
続いては、理学療法士と作業療法士の違いを詳しく解説していきます。
関連リンク:理学療法士とは何か?仕事内容から、似ている作業療法士との違いまで解説!
理学療法士とは:身体アプローチでリハビリを図る
理学療法士は英語で「Physical Therapist」と言い、それぞの頭文字をとって「PT」と略されます。
日本独自の資格ではなく、世界共通の医療専門職となっており、WCPT(世界理学療法連盟)という国際機関もあります。
参照:WCPT(世界理学療法連盟)・他団体情報 – 公益社団法人 日本理学療法士協会
Physicalとは日本語で「身体的、肉体的」、Therapistは「療法士」と訳されることから、
リハビリテーション分野において、身体についての療法や回復に重点が置かれています。
具体的には起き上がり・筋力強化・座位保持・車いす移乗・歩行など、日常生活をおくる上で重要な基本動作の回復・維持・悪化防止の観点から、主に運動療法や物理療法の2つを目的に応じて使い分けながらおこなわれます。
運動療法とは日常生活をおくる上で重要な基本動作を行うために、歩行訓練や筋力強化など実際に身体を動かすことで、動作改善を図る事を言います。
対して物理療法は電気・温感などの器具を使用したり、マッサージを行い外的刺激により、基本動作の維持や改善・痛みの軽減などを図ります。
作業療法士とは:身体と精神の2つの側面にアプローチしてリハビリを図る
作業療法士は英語で「Occupational Therapis」と言い、それぞの頭文字をとって「OT」と略されます。
こちらも理学療法士同様、世界共通の医療専門職となっており、WFOT(世界作業療法連盟)という国際機関もあります。
参照:WFOT等海外関連情報 | 一般社団法人 日本作業療法士協会
作業療法士はリハビリテーション分野において、応用的動作能力や社会的適応能力についての療法や回復に重点が置かれています。
そのため、運動療法や物理療法の2つを目的に応じて使い分ける理学療法士とは違い、身体的なリハビリと精神的なリハビリを機能的かつ複合的に行っていきます。
具体例としてはウォーキングやダンスなどの基本的な運動能力の機能回復、食事や家事などの応用的動作能力の回復をサポートしたり計算やパソコン操作などの社会的適応能力の訓練などを図ったりすることが作業療法士の役割です。
また理学療法士が療法を行った患者に対し、その後の療法を担当することが多いのも作業療法士の特徴です。
そして作業療法士は、精神的な障がいについてもアプローチすることが出来るので、理学療法士と進路や就職状況に違いが出てきます。
詳細は後述しますが、精神科や心療内科などでも活躍することが多いのが、作業療法士です。
理学療法士と作業療法士の国家試験と合格率の違い
ここでは理学療法士と作業療法士の国家試験と合格率について、説明していきます。
理学療法士と作業療法士はともに国家資格なので、国家試験に合格しなければなることができません。
仕事内容では、理学療法士と作業療法士はそれぞれ違うことを述べてきましたが、
国家試験や合格率については共通事項が多くなっています。
理学療法士:国家試験の受験資格
理学療法士の国家試験の受験資格は「理学療法士及び作業療法士法」で定められています。下記がその部分を定めた法律になっています。
■学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することができる者(法第11条第1号の規定により文部科学大臣の指定した学校が大学である場合において、当該大学が学校教育法第90条第2項の規定により当該大学に入学させた者又は法附則第6項の規定により学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することができる者とみなされる者を含む。)であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した理学療法士養成施設において、3年以上理学療法士として必要な知識及び技能を修得したもの(令和2年3月16日(月曜日)までに修業し、又は卒業する見込みの者を含む。)
この部分の解説をすると、大学に入学する資格がある人が、指定された大学・短大・専門学校で3年以上の期間で理学療法士として必要な知識や技術を習得すること。そして2020年3月16日(月曜日)までに卒業、もしくは卒業見込みであること(※第55回理学療法士国家試験の場合)となっています。
国家の受験資格については、作業療法士とほぼ同様の内容になっています。
理学療法士:国家試験の実施日と実施内容
理学療法士の国家試験は、年に一度実施されていて、令和元年度 第55回理学療法士国家試験の実施日は、令和2年2月23日(日曜日)、
合格発表は令和2年3月23日(月曜日)となっています。
試験実施内容としては、①一般問題(解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び理学療法)と、②実地試験(運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び理学療法)となっており、かなり専門的かつ、出題範囲の広い試験となっています。
理学療法士:国家試験の合格率
理学療法士の国家試験の合格率は、直近10年の平均が84.1%と非常に高い合格水準となっています。
直近の第54回理学療法士国家試験では、合格率85.8%と平均値を若干上回りました。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
理学療法士 | 12,605人 | 10,809人 | 85.8% |
うち新卒者 | 10,608人 | 9,845人 | 92.8% |
うち既卒者 | 1,997人 | 964人 | 48.3% |
<関連リンク>理学療法士国家試験の施行ページ、4 受験資格(1)
作業療法士:国家試験の受験資格
作業療法士の国家試験の受験資格も理学療法士と同様に「理学療法士及び作業療法士法」で定められており、受験資格については理学療法士とほぼ同様の内容になっています。
作業療法士:国家試験の実施日と実施内容
第55回作業療法士国家試験は理学療法士国家試験と開催日時・合格発表が同じです。
試験実施内容としては、①一般問題(解剖学・生理学・運動学・病理学概論・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法)と、②実地試験(運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法)となっており、かなり専門的かつ、出題範囲の広い試験となっています。
作業療法士:国家試験の合格率
作業療法士の国家試験の合格率は、直近10年の平均が79.5%と理学療法士よりは低いですが高い合格水準となっています。
直近の第54回理学療法士国家試験では、合格率71.3%と平均値を若干下回りました。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
理学療法士 | 6,358人 | 4,531人 | 71.3% |
うち新卒者 | 5,137人 | 4,108人 | 80.0% |
うち既卒者 | 1,401人 | 423人 | 30.2% |
理学療法士と作業療法士の進路・就職状況の違いとは?
ここでは理学療法士と作業療法士の進路・就職状況について説明していきます。
理学療法士と作業療法士はともに医療系の国家資格のため、就職先については共通事項が多くなります。
しかし、作業療法士は精神的な障がいについてもアプローチすることが出来るので、精神科や心療内科などで活躍する人もいます。
理学療法士の場合
理学療法士は主に病院や診療所などの医療施設(66.6%)、介護老人保健施設などの医療福祉中間施設(6.9%)、老人デイサービスなどの老人福祉施設(1.6%)などで働いています。
中には専門性を生かし、人数は少ないですがスポーツ関係施設やフィットネス施設などの健康産業(0.07%)で活躍している理学療法士もいます。
参考:理学療法士国家試験の施行ページ、4 受験資格(1)より
作業療法士の場合
作業療法士は主に病院や診療所などの医療法関連施設(60.5%)、介護老人保健施設などの介護保険法関連施設(10.1%)で活躍しています。
医療や福祉・介護の現場だけでなく、養成校や訪問看護ステーションなどの教育・職業領域で4.7%の作業療法士が活躍しています。
参考:理学療法士国家試験の施行ページ、4 受験資格(1)より
参考:理学療法士国家試験の施行ページ、4 受験資格(1)より
理学療法士と作業療法士の平均給与の違いとは?
ここでは理学療法士と作業療法士の平均給与について説明していきます。
理学療法士は医療施設に所属して活動することが多いので、給料額がいいイメージの人もいると思います。
理学療法士の場合
理学療法士(作業療法士も含む)の平均月収28万円、平均年収413.8万円でした。
過去の年収実績より平均年収は300万円台後半から400万円台前半を推移しています。
参考:2018年度の厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」より
20代の理学療法士の平均年収は20歳代前半では約315万円、20代後半では約370万円というデータもあります。
新卒から平均年収が変わっていないことから、あまり年収の変動がないことがわかります。
参考:理学療法士の気になる?年収・給料・収入【スタディサプリ 進路】より
作業療法士の場合
作業療法士の平均給与は理学療法士と同様でした。
参考にしたデータは作業療法士の年収も含まれており、作業療法士単体の年収ではありませんが、そこまで外れたデータではないと思われます。
参考:2018年度の厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」より
理学療法士と作業療法士の養成校で学ぶ内容の違いとは?
ここでは理学療法士と作業療法士の養成校で学ぶ内容について説明していきます。
理学療法士と作業療法士になるためには『大学に入学する資格がある人が、文部科学大臣または厚生労働大臣より指定された大学・短大・専門学校で3年以上の期間で理学療法士として必要な知識や技術を習得すること。そして2020年3月16日(月曜日)までに卒業、もしくは卒業見込みであること(※第55回理学療法士国家試験の場合)』となっています。
理学療法士の場合
身体のリハビリをおこなうため、理学療法士は運動療法や物理療法による施術を行います。
患者の抱える問題や原因に対して、適切なリハビリ方法を提案する判断力や応用力を身につけるために基礎医学や運動器などの理学療法に関連する専門分野を学びます。
ほかにも学内実習や臨床実習を通じて、座学では身につかない実践的な技術や知識を学びます。
作業療法士の場合
作業療法士は身体とメンタルの両面からリハビリをおこなうため、目的や状況に応じて機能的かつ複合的な療法を学びます。
具体的にはウォーキングやダンスなどの基礎運動能力の機能回復法、食事や家事などの応用動作能力の機能回復法、計算やパソコン操作など、社会で役立つ能力向上の訓練を学びます。
患者の活動レベルを正しく評価して最適なリハビリ計画を立てるため、運動学や解剖学を学びます。
また患者に寄り添うことのできる医療人になるため、心理学を学びます。
学内実習や臨床実習を通じて、座学では身につかない実践的な技術や知識も学びます。
理学療法士と作業療法士の違い
今回は理学療法士と作業療法士の違いを見てきました。
ポイントごとに分けることで、理学療法士と作業療法士の明確な違いがお分かりいただけたと思います。
理学療法士は身体に障がいのある人あるいは障がいの発生が予想される人に対して、作業療法士は身体の障がいだけでなく、メンタルに対してもアプローチが必要な人のサポートをおこないます。
今後は増えていくニーズに応えるため、活躍の場はますます拡大していくと思われます。
理学療法士や作業療法士を目指したいと思ったときに、この記事が参考になれば幸いです。