理学療法士の実習とは?現場で活躍できるように臨床実習が変更
理学療法士の養成学校や実習内容は「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(以下、指定規則)によって定められています。この指定規則は1999年に大綱化と単位制の導入がされて以降、改正が行われませんでした。
しかし超高齢社会となり、医療や介護福祉業界の需要増大・地域包括ケアシステムの導入など、社会状況が大きく変化したことで、2020年4月に新しい指定規則を実施するために改正が行われました。
今回は、理学療法士を目指す上で実践力を身につけられる臨床実習について紹介します。
臨床実習の概要や変更点
今回の「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」の改正に伴い、臨床実習に関係する内容にいくつか変更点がありました。
ひとつずつ分かりやすく説明していきます。
臨床実習で実践力を身につけよう!
臨床実習の目的は養成学校で修得した知識や技術を病院などの臨床の現場で実際に行うことで、「実践できる」「対応できる」というレベルにすることを目指します。
今回の改正により原則として以下のように3つに分類されました。
(旧)臨床実習の内容に関する記載は特になし。
(新)臨床実習の内容は見学実習・評価実習・総合臨床実習の3つで構成する、と追記。
各実習を実施する場合、臨床実習前の学修内容と合わせることで理解を深められるように、進捗状況にあわせて適切な時期に行うことが求められています。
- 見学実習
見学を通じて、患者への対応などを学びます。
主に1年次に行われます。
- 評価実習
患者の状態を評価する実習です。
カリキュラムにもよりますが主に専門基礎知識を学ぶ2年次に行われます。
- 総合臨床実習
患者の障害像を把握・治療目標や治療計画の立案・治療実践から治療効果の判定を行う実習です。
理学療法の基礎だけでなく応用的な内容も学んだ、3年次や4年次に行われます。
評価実習と総合臨床実習において、実習生が医療チームの一員として診療に加わる「診療参加型臨床実習」が望ましいとする努力規定なども追加されました。
「診療参加型臨床実習」では医療チームの立案した診療計画に基づき、指導者の監督・指導のもとで患者を受けもつなど診療に参加するものと定義されています。
参考:理学療法学教育モデル・コア・カリキュラム |公益社団法人日本理学療法士協会
参考:理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン(新旧対照表)
臨床実習の単位数
職場管理・職業倫理などに関連する理学療法管理学の追加や臨床実習の拡充に伴い、理学療法士養成施設の総単位数が、93単位から101単位に見直されました。
(旧)臨床実習の単位数は18単位。
(新)臨床実習の単位数も18単位から20単位に増加。
臨床実習の1単位あたりの時間が45時間でしたが、課題やレポート作成などの臨床実習の時間外学修を考慮して「1単位を40時間以上の実習かつ、実習時間外に必要な学修などがある場合でも45時間以内」に見直されました。
この改正よって、長時間実習を防ぎ、学生の課題やレポート作成時間の確保を目指す狙いがあると思われます。
臨床実習指導者
実習生の教育を担当する実習指導者の質を向上させるために変更されました。
(旧)実習指導者は、理学療法士養成施設においては、理学療法に関し相当の経験を有する理学療法士、作業療法士養成施設においては、作業療法に関し相当の経験を有する作業療法士とし、かつ、そのうち少なくとも1人は免許を受けた後3年以上業務に従事した者であること。
(新)理学療法士免許を受けてから5年以上理学療法士として業務に従事した者であり、厚生労働省が指定した臨床実習指導者講習会などを修了した者と指定されました。
これにより実習指導者は理学療法に関して相当の経験がある理学療法士のみ実習指導者になれます。
臨床実習指導者講習を修了した理学療法士が不足していることから、見学実習あるいは実習施設の実習では、実習施設における実習学生と実習指導者数の比率が2対1程度でなくても可能になりました。
臨床実習施設の条件
臨床実習施設においてもさまざまな項目内容の見直しや、養成施設の質を確保するため第三者による外部評価・結果の公表が義務付けるなどの項目が追加されました。
(旧)「実習施設のうち少なくとも1か所は養成施設に近接していることが望ましいこと」
(新)「原則として養成施設に近接していること」
- 医療提供施設
指定規則で定められた総臨床実習時間はおよそ900時間あり、実習時間の3分の2以上は医療提供施設において行うことが求められています。
(医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2第2項に規定する医療提供施設(薬局・助産所を除く。))
さらにその中で、医療提供施設における実習の半分以上の時間は病院あるいは診療所で行う必要があります。
- 訪問・通所リハビリテーション
訪問・通所リハビリテーションにおける実習は1単位以上(およそ45時間)行うことが定められています。
訪問や通所リハビリテーション以外に介護保険施設や身体障害者福祉施設などで実習経験を積むことで、経験豊富な理学療法士を育成する狙いがあります。
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病院や介護施設が主な実習先!
理想の理学療法士に近づけるように、あらかじめ実習先の特徴を把握して上手な実習先選び方をしましょう。
病院などの医療機関
多くの理学療法士が多く就職している先が、病院などの医療機関です。
現在、病院は急性期病院・回復期病院など細かく役割ごとに分類されています。
- 急性期病院
県立病院などの公営医療機関や大きい民間の総合病院などが当てはまります。
救急患者などの緊急性の高い患者を治療するために、高度な設備や高いレベルの医療技術が求められます。
そのため優秀な人が多く集まり、自分自身の能力を高められます。
- 回復期病院
回復期リハビリテーション病棟としての認定を受けた医療施設や、リハビリテーション病院などが当てはまります。
治療対象はリハビリテーション効果が期待できる患者に限られており、脳卒中や股関節頸部骨折、人工関節治療の患者などが多いです。
高い在宅復帰率が求められており、自立した生活や職場復帰を考えた治療計画を身につけることができます。
参考:医療提供体制について (その1) – 厚生労働省-病院の機能に応じた分類(イメージ)
診療所・クリニック
入院設備が19床以下の規模の医療機関を対象としており、町のかかりつけ医として地域医療に貢献しています。
理学療法士の活躍場所として整形外科が多いことが特徴です。
病院とは異なり外来患者が多く、物理療法による治療をメインに実施しています。
介護保険施設
介護分野において理学療法士が多いのが介護保健施設です。
老人保健施設の役割は医療と介護の中間施設といわれており、理学療法士などのリハビリテーション職だけでなく医師や看護師が在籍していることが義務付けられています。
老人ホームのように介護が必要な人が生活する施設とは違い、リハビリテーションによって在宅復帰などを目指すため、入居期間が原則3~6ヶ月と限られています。
訪問・通所リハビリテーション
通所リハビリテーションは在宅の高齢者などが施設に通い、日常生活に必要なリハビリテーションなどを受けられます。
また、家族の介護負担を軽減するという目的もあり、高齢者の増加により今後は在宅介護の需要が増加することが予想されています。
そのため通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの需要は大きくなり、多くの理学療法士が求められています。
介護者に対する身体機能の維持を目指した理学療法や介護サービスを身につけられます。
臨床実習の現場は成長できる!
臨床実習の現場は、わからないことや初めてのことばかりが多く、肉体的にも精神的にも疲労が溜まりがちです。
その中で、少しでも疲れを減らすためにできることから改善して、実習先の人間関係を良好なものにしましょう。
レポートや課題の量が多くて大変
平成29年に行われた厚生労働省のアンケート結果では、「レポートなどの課題」を毎日家に課題を持ち帰って行っていた学生が76.5%、自宅に持ち帰り課題を行っていた学生まで含めると90%を越えました。
今回の改正により、実習生の課題やレポートで大変という状況の改善が期待されます。
参考:学生・卒業生に対するアンケート結果|第3回理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会
実習前に心得ておくべきマナー
近年、実習先から見学・実習の態度に対して厳しい指摘が増えていると言われています。
社会福祉の現場では、単に学生としてではなく、社会人や組織人・専門援助職としての自覚と行動が求められます。
そのため実習生として現場の人々への配慮や専門職を目指して学習していうる姿勢など、真剣に学ぶことが期待されます。
- 臨床実習の現場で、職員や利用者に対してきちんと挨拶ができない
- 名刺の受け渡しのマナーを知らない
- 尊敬・丁寧・謙譲語を使い分けられない
このような実習生が多いという声が増えています。
理学療法士としての知識やスキルも大切ですが、人として必要なマナーは実習前にきちんと身につけておきましょう。
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実習は理学療法士としての実践力を磨ける期間です!
日本社会の高齢化に伴い理学療法士の数は増加しており、さらに、理学療法士の質の高さも同時に求められています。
同時に理学療法士が活躍できる職場は幅広くあり、実習を通じて、理想の理学療法士像を見つけることもできます。
診療チームの一員として加わる実習の現場では、臨床実習指導者の指示された範囲で行う「診療参加型臨床実習」を学ぶことができます。
見学実習では身につけられない「実践力」を身につけることのできる貴重な機会であるため、あらかじめできる準備をする必要があります。
基本的なあいさつやマナーを身につけて、実習先の人と良好な人間関係を築けるようにしましょう。
実際に就職した際にどのような仕事がしたいか、しっかりとイメージを固める場としても役立ててください。
<参考>
理学療法学教育モデル・コア・カリキュラム |公益社団法人日本理学療法士協会
医療提供体制について (その1) – 厚生労働省-病院の機能に応じた分類(イメージ)
学生・卒業生に対するアンケート結果|第3回理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会
<関連リンク>
理学療法士の志望動機を採用担当者の視点から変えていこう!